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平塚 拓也(Hiratsuka, Takuya)

(2016.5.1~2020.3.31)

 

昭和49年、京都府生まれ。平成13年京都大学医学部医学科卒業。平成20年医学博士(京都大学)。その後、大津赤十字病院、大阪済生会野江病院にて病理医として働き、臨床経験を積み、様々な疾患について触れる。平成24年より京都大学大学院医学研究科病態生物医学助教を経て、現在京都大学大学院医学研究科創薬医学講座特定講師。
大学院では、現在特定教授である鶴山先生の指導の下、リンパ腫におけるウイルス発がんと個体の遺伝的背景との関係についての解析、研究を行ってきました。その後、大津赤十字病院、大阪済生会野江病院にて病理医として働き、病理診断について研鑽を積み、様々な疾患について触れました。そうした中で、それぞれの疾患の形態的特徴、診断のメルクマールとなるようなタンパク発現などとそのメカニズム、予後との関係について興味を持つようになりました。そうした中で、平成24年より京都大学大学院医学研究科病態生物医学にて、FRET (Fluorescence resonance energy transfer: 蛍光共鳴エネルギー移動)バイオセンサーを発現するトランスジェニックマウスを用い、様々な生命現象におけるタンパク活性の量的質的情報や時空間制御に関する解析に 取り組み、それとともに様々なデジタル画像処理について学んできました。このことを生かし、この創薬医学にて新しい病理学を築くことに挑んでいきたいと考えています。

 

新しい病理学

私はここで述べましたように、病理医として病理学を学んできました。病理学は19世紀末、ホジキン病で有名なトーマス・ホジキン、カール・ロキタンスキーやルードルフ・ルートヴィヒ・カール・ウィルヒョウによって創始されました。顕微鏡で病気を構成している細胞を診る、これが病理学の基本ですが、当時は革新的な医学研究方法でした。これにより、現在に至る医学研究の礎が築かれたのです。
では、現在の病理学はどういうものでしょうか?現在、病理学は基礎医学であるだけではなく、診断学として臨床医学の一翼を担っています。病理診断学は同じ癌でも、その構成する細胞がどのようなパターンをとるかにより、予後が異なることを明らかにしていきました。また、免疫染色という手法により、その細胞が発現するタンパク、ないしはそのパターンの特異性により、どの癌に相当するか調べています。また、この免疫染色によるタンパク発現の解析が、分子標的治療の出現とともに、この分子標的治療がどの程度有効かを予測するマーカーとなることが知られてきました。逆に言うと、病理医、病理学者はこの免疫染色や形態学的特徴が病気の予後に結び付くことを知っているわけであり、それによりある形態パターンをとるメカニズム、免疫染色にて日常診断にて使っているたんぱく質マーカーのその疾患におけるメカニズムを明すれば、治療の標的や診断に利用できるバイオマーカーを発見することができる可能性があると言えるわけです。
また、先ほど述べましたように、病理学とは顕微鏡で細胞を診る学問です。この顕微鏡に関しましても、現在共焦点顕微鏡、二光子励起顕微鏡、光シート顕微鏡、また2014年のノーベル化学賞を受賞した、光の回折限界を超えた超解像度顕微鏡:STED(Stimulated Emission Depletion)顕微鏡、 PALM(Photoactivated localization microscopy)顕微鏡が出現し、日進月歩の進歩を示しています。また、質量分析技術を利用した、標本の上で、どのような物質がどれだけ存在しているか定量的に示すことができる質量顕微鏡も挙げられます。従来の光学顕微鏡だけではなく、これらの新しい顕微鏡を用いることが病理学の新しいフロンティアを拓いてくれることを確信しております。
このような状況のなかで、私は鶴山教授とともに、この質量分析、質量顕微鏡の技術を用い、様々な疾患における新規バイオマーカーの探索や新規治療標的の同定にチャレンジしたいと考えております。また、病理学においてもデジタル化を推し進め、定性的だった病理学に定量化や自動解析メカニズムの開発を進めて行きたいと考えております。

平塚 拓也(Hiratsuka, Takuya)

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